契約恋愛~思い出に溺れて~
慌てて中身を取り出すと、そこには絵が描かれていた。
辛うじて顔のような形は分かるけど、
たくさんの線で描かれたそれは、人間とも動物とも言えず、
私には描いてあるものが何なのか分からなかった。
けれども紗優は、目を見開いたまま、小さく呟いた。
「……ラビィだ」
「え?」
「ママ! サトルくんは? どこ?」
「さっき帰っちゃったよ」
「ヤダ。まって」
そのまま紗優は、手に持っていた荷物を投げ出して駆け出した。
私は驚いて、紗優が落とした大事な卒園証書や記念品を拾い、その後を追いかける。
園から100メートルほど離れたところに、駐車場がある。
紗優は、そこを目指して走り出した。