契約恋愛~思い出に溺れて~
第3章

私からの一歩


 謝恩会が終わった後、英治くんは近くのコンビニまで迎えに来てくれた。


「おじちゃん!」

「サユちゃん。おめでとう」


今は紗優に譲ってあげる。

そんな気持ちでいると、小さな嫉妬もしなくて済むみたい。

お祝いにと、デパートに連れて行ってもらい、紗優は絵本を1冊買ってもらった。

それは海に住む一人ぼっちのお魚が、頑張っていたらいつしか仲間ができるとうお話で。

紗優は嬉しそうに何度もページをめくっていた。


「夕方、ちょっと行かなきゃいけないところがあるんだ」


彼はそう済まなさそうに言う。

どっちみち、両親も紗優の卒園をお祝いしたいから、外食しないかという話を朝持ちかけられていた。


「いいわよ。両親と外食する話もあるの」

「そうか。じゃあ、家まで送るね」


いつも通りあっさり言われてしまうのが、少し寂しくて。
だけど今は紗優もいるから、我慢して笑顔を作った。
< 356 / 544 >

この作品をシェア

pagetop