契約恋愛~思い出に溺れて~
第3章
私からの一歩
謝恩会が終わった後、英治くんは近くのコンビニまで迎えに来てくれた。
「おじちゃん!」
「サユちゃん。おめでとう」
今は紗優に譲ってあげる。
そんな気持ちでいると、小さな嫉妬もしなくて済むみたい。
お祝いにと、デパートに連れて行ってもらい、紗優は絵本を1冊買ってもらった。
それは海に住む一人ぼっちのお魚が、頑張っていたらいつしか仲間ができるとうお話で。
紗優は嬉しそうに何度もページをめくっていた。
「夕方、ちょっと行かなきゃいけないところがあるんだ」
彼はそう済まなさそうに言う。
どっちみち、両親も紗優の卒園をお祝いしたいから、外食しないかという話を朝持ちかけられていた。
「いいわよ。両親と外食する話もあるの」
「そうか。じゃあ、家まで送るね」
いつも通りあっさり言われてしまうのが、少し寂しくて。
だけど今は紗優もいるから、我慢して笑顔を作った。