契約恋愛~思い出に溺れて~


「正直言うと、紗彩を抱くのは少し怖かったんだ」

「なんで?」

「今までと違うから。

これまで、こういう関係になった人は何人もいるけど、別れようと言われればそれで困るものでもなかった。
だから、俺はやっぱりどこか欠陥品なんだと思うんだけど。

でも、紗彩を抱いたら、のめりこんでしまいそうで怖かった。
すぐ一緒に暮らせる訳でもないのに、手放したくないって思ってしまうのが嫌で。
だから、すぐには手を出せなかった」

「英治くん」

「でも、そっちから来られちゃったら我慢なんかできないでしょ」


クスリと笑われて、私の顔が真っ赤に染まる。

彼は笑顔を絶やさないまま、私を抱き寄せる。

いつの間にか自分ばかりが裸でいる事に気づいて、落ち着かずに毛布を引っ張って胸を隠した。


「本当は、もう少しクリアにしないといけない事があるから。全て片付いてから渡すつもりだったけど」

「……」

「まあ予約みたいなもんだね」

「予約って……む」


キスが落ちる。

英治くんのキスは、力が抜ける。
意地っ張りの私の殻を、簡単に壊してしまう。

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