契約恋愛~思い出に溺れて~
服を全部着こんでから、お湯を沸かす。
戸棚からインスタントコーヒーを探しだし、昨晩から出しっぱなしだったマグカップを洗う。
そのうちにお湯が湧いたので注ぎ込む。
そうしているうちに、英治くんが体から湯気を立てながら出てきた。
「紗彩は、シャワーよかった?」
「うん。私はいい」
このまま。
英治くんに抱かれたままの体で帰りたい。
出来るだけ長い間、触れられた感触を忘れたくなかった。
「コーヒーありがと。……あちち」
「まだいれたばっかり」
「うん。目ぇ覚める」
「ごめんね、こんな早くに起こして」
自分もコーヒーを一口含んでそう言うと、彼は笑って頭を撫でてくる。
「気づかなかったら勝手に帰ってそうだったね」
「え? うん。そのつもりだったけど」
「そんな事されたらへこむから。今度からもちゃんと起こして」
「う、……うん」
今度って。
また、こんな風に来てもいいのかな。