契約恋愛~思い出に溺れて~
「あのさ」
彼は一度立ち上がると、戸棚のところから一通の手紙を取り出した。
「読んでみて」
「……いいの?」
クリーム色のシンプルな封筒。
中には、一枚だけ便箋が入っていた。
【毎年、嫌な思いをさせてごめんなさい。
今年も待っています。
本当にごめんなさい
母より】
「……これは?」
「俺が30になった年の誕生日、実の母親から手紙が届いたんだ。
今までの事を謝りたいから会いたいって内容で。
正直、なんで今頃って思ったんだよ。
それで電話をしてみた。
そうしたら、再婚相手との子供が成人するのを待っていたからだって言うんだ。
それって結局一番は今の家族ってことだろ。
バカにすんなって、思って。
それきり連絡を取ってない。
でも、毎年手紙が来る。
毎年、……放置してるけど」