契約恋愛~思い出に溺れて~
「なんか、紗彩に格好つけてても仕方ないかなって気がしてて。
もう話しちゃおうかと思うんだけど」
「だから、何を?」
「でも軽蔑されるとかなり嫌なんだけど」
「だから何をよ。もう、はっきり言って!」
私の苛立った表情に苦笑して、彼は背中にまわしていた手を離した。
「俺さぁ。達雄の事好きだったんだよね」
「え? はぁっ?」
好きって。
ど、どういう意味で?
焦りが顔に出ていたのか、英治くんはこっちを見て吹きだした。
「そう言う意味じゃなくて。
なんて言えばいいんだろ。執着してた。
達雄は、家族愛が強いだろ。
妹が好きなら、なんでモノにしちゃわないんだろうってずっと思ってた。
でも、そうしないのは、家族を守りたいからなんだよな。
正直、自分の親父よりも達雄の方が愛情深く思えてさ。
アイツの傍に居るのは、なんでかいつも楽しくて。
俺は多分アイツに憧れていたし、嫉妬もしてた」
「そういう、意味?」
ちょっとホッとして、私は息をつく。