契約恋愛~思い出に溺れて~
その顔を見てると、なぜだか胸の奥から温かい想いが湧きだしてきて、私はそれを、そのまま言葉にした。
「私がそう言うの、分かってたんでしょ?
英治くんって、勝算無かったらそんなこと言わない気がする」
すると、彼はクスリと笑いだした。
「分かる?」
「うん。分かります」
「……紗彩には敵わないなぁ」
彼の手が伸びて、私を引き寄せる。
ギュッと強く抱きしめられて、英治くんの香りに包まれると、少し肩の力がぬけた。
正直全く気にしない訳じゃないけど。
過去の事を問われたら、私だって色々あったんだもの。
だから、ここは目をつぶる事にしよう。