契約恋愛~思い出に溺れて~


「これからはダメよ。私もしない。もう恋愛はこれで最後」

「紗彩、俺の歳いくつだと思ってんの。もうおっさんだよ。もてないよ」

「ダメ。男の人はいくつでも大丈夫だもん」

「じゃあ、ちゃんと捕まえてもらおうか」


彼は少し私を離して、顔を覗き込んだ。

目にうつる彼は、言葉の割に表情が硬い。


「え?」

「結婚しよ」


何度か提案しては保留にしていた言葉を、彼はもう一度しっかりと口にした。


「俺と、結婚しよう」

「英治くん」

「何だか無性に、家族が欲しくなってきたんだ」


話すほどに、彼の顔がほころんでくる。


「紗彩の実家の近くにマンション買うか家建てるかして。一緒に暮らそう」

「だって。うちの周りって地価高いのよ?」

「知ってる。あそこ交通いいもんな。
でも俺だってこの年まで独身を通してれば、貯金の一つや二つくらいあるよ。
紗優ちゃんの事考えれば、昼間身内が近くに居た方がいいんだろ」

「そうだけど」
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