契約恋愛~思い出に溺れて~
流れる月日
それからの英治くんの動きは速い。
翌週には、私の両親に挨拶に来た。
以前の事もあって、両親は英治くんには好感を持っている。
加えて、近くに暮らそうと思っている、という言葉で思ったよりも簡単に了承してくれた。
その翌日には彼の父親を訪ねた。
今回は初めてという事もあり、私と英治くんだけで、紗優は母とお留守番だ。
英治くんが一人立ちしてから再婚したという、50代くらいの女性がお茶をいれてくれた。
女性と英治くんはどこか他人行儀で、彼女は彼をちらりと見ると、頭を下げてリビングを出て行く。
ソファにゆったりと腰かける彼のお父さんは、肩幅があり、英治くんと比べれば少しふっくらとしていた。
髪には半分ほど白髪が交じり、目尻によった皺のせいか穏やかな印象を受けた。
「ひさしぶりだな」
「ああ」
かわされる会話は、どこかそっけない。
そういえば、彼とお父さんは、基本的に互いに干渉し合わない主義だと前に聞いた事がある。