契約恋愛~思い出に溺れて~
「してないの?」
「えっと。……実は、その時は紗優がおなかに居て。その……」
お父さんの前である事が、私の歯切れを悪くする。
まさかここでこんな話を追求されるなんて。
英治くんはそんな私の様子を見て、父親の方に視線を向け、わざとらしく溜息をついた。
「ごめん、親父。ちょっと外して」
「え? ああ。すまないね。私は気が利かなくてなぁ」
頭を書きながら、お父さんは立ち上がる。
「す、すいません!」
「いやいや」
私が軽く一睨みすると、英治くんは少しばつの悪そうな顔をして、お茶を一口含んだ。
扉が閉まって、部屋に二人きりになったところで私は話しだした。