契約恋愛~思い出に溺れて~
その一連の会話を聞いていた英治さんが席を立つ。
「俺が支払いしておいてやるよ。後で請求するから。またな」
そう言って、何事もなかったかのように店を出ていく。
私たちもその後、隠れるように店を後にした。
ずっと無言のまま、肩を並べて歩いた。
お互い、目を合わせる事はなかったのは、おそらく後ろめたい気持ちがあるからなのだろう。
少なくとも、私はそうだ。
歩きながら気持ちは揺れる。
後悔が半分。
もうどうにでもなってしまえという気持ちも半分あった。
ただ、甘えたい気持ちも確かにあった。
一時でもいい、かりそめでもいい。
嘘でもいいからユウのぬくもりが欲しかった。