契約恋愛~思い出に溺れて~
「ただいま」
帰れるのは、いつも22時過ぎ。
すでに紗優は寝室に入っていて、私を迎えてくれたのは、片付けをしていた母だった。
「今日、英治さんが寄っていったわよ」
「え? 英治くんが? なんだろう。聞いてないけど」
「目ぼしい物件があったからって言ってたけど。夕飯時だったから、一緒に食べてもらったよ」
「そうなの。ごめん。ありがとう」
携帯を取り出して確認するも、不在着信もメールもなかった。
首をひねっていると母が重ねて言う。
「二階に上がって、お線香もつけていってくれたよ。ちゃんとお礼しなさいよ」
「うん。分かった」
「ところでご飯は?」
「仕事中にパンを食べたからもういいわ。ごめんね母さん、ありがとう」
母にお礼を言って、二階へと上がる。