契約恋愛~思い出に溺れて~


「ただいま」


帰れるのは、いつも22時過ぎ。

すでに紗優は寝室に入っていて、私を迎えてくれたのは、片付けをしていた母だった。


「今日、英治さんが寄っていったわよ」

「え? 英治くんが? なんだろう。聞いてないけど」

「目ぼしい物件があったからって言ってたけど。夕飯時だったから、一緒に食べてもらったよ」

「そうなの。ごめん。ありがとう」


携帯を取り出して確認するも、不在着信もメールもなかった。
首をひねっていると母が重ねて言う。


「二階に上がって、お線香もつけていってくれたよ。ちゃんとお礼しなさいよ」

「うん。分かった」

「ところでご飯は?」

「仕事中にパンを食べたからもういいわ。ごめんね母さん、ありがとう」


母にお礼を言って、二階へと上がる。
< 449 / 544 >

この作品をシェア

pagetop