契約恋愛~思い出に溺れて~
二人で身をひそめるように歓楽街の小さなホテルに入る。
最初からついていた間接照明の明かりで、室内はうすら明るかった。
そこで、何かに突かれたように私たちはキスを交わした。
目をつぶり、ただひたすらにユウの姿を思い浮かべる。
柔らかくて温かい唇の感触、肌を滑る大きな掌。
違和感を感じることが出来ないほど、ユウの感触を忘れている。
私の初めての人はユウだった。
24歳で初めての経験に、すごくカチカチになっていて。
だから妙に記憶に残っていた。
彼がゆっくりと落とすキスの嵐。
ブラウスのボタンをはずす、骨ばった指。
薄暗闇の中、何度も私の表情を確認してくれた眼差し。
慎重に、大事に、抱いてくれた。
あの日の記憶に、感覚が重なる。