契約恋愛~思い出に溺れて~
紗優はすでに寝息を立てていて、暑いのかお腹にかけているタオルケットさえも蹴り飛ばしている。
それを戻して顔をあげると、開いたままになっている仏壇が見えた。
横には、中古マンションの資料が置いてある。
英治くんはきっと、これを持ってきてくれたのだろう。
再び紗優に視線を戻す。
小学生になって、少ししまってきたその顔も、
寝ているときは力が抜けていてあどけない。
「お休み、紗優」
毎日、寝顔に声をかけるのも切ないものだ。
一つ溜息をついて、着替えを持って風呂場へ行った。
夜道を小走りで歩いてきたから汗をかいている。
早くさっぱりしたかった。