契約恋愛~思い出に溺れて~
「寝てろよ。朝飯、俺が作るから」
「大丈夫よ。ちょっと痛いだけだもの。
私がやる」
「いいよ。無理すんな」
「やるってば!」
どうしてこんなことで意地をはっちゃうんだろう。
分からないけど、今は引きたくなかった。
ただ甘えるのが何だかいけないことのような気がして。
無理に自分を奮い立たせて、朝食を作って皆で食べた。
一緒にいて、テーブルも囲んでいるのに、何かがおかしくて。
湧いて出そうな不安を、ご飯と一緒に無理矢理に飲み込んだ。
「ちょっとお薬買ってくるね」
ポツリとそう呟くと、彼は視線を私にうつした。
「そんなにひどい? 俺が買ってこようか?」
「ううん。少し外の空気も吸いたいから。近くにドラッグストアあったよね」
「ああ、前の通りを左にまっすぐ行けばあるよ」
「じゃあ行ってくる」
このまま同じ部屋にいるのは気まずかった。
まるで逃げてるみたいだと、そう思いついて落ち込みが増す。