契約恋愛~思い出に溺れて~
「この間夜おとうさんが来た日にね。サユ泣いちゃって。
つい言いちゃったの。
『だってママ、遊んでくれないからキライ』って」
「……」
「そしたらおとうさん、サユのほっぺ、ちょっと叩いた。
そしてね。『それでもママは、サユのこと好きだよ』って言った」
紗優は指先をこすりあわせて、一生懸命に話をする。
その動きをじっと見ながら、頭の中で言葉の意味をしっかり考えようと思うけど、うまくまとまってくれない。
「『でもママお仕事ばっかりだもん』って、サユなんども言ったの。
そしたらお父さんもなんども言った。
『どんなに忙しくても、ママはサユのこと思ってる』って。
『でもサユはまだ子供だから、分からなくて当たり前だから、お父さんが何度でも教える』って」
英治くんが、そんな風に言うの?
だって昨日は、仕事の方をなんとか調整しろって言ってたのに。
「そしたらサユも、いつの間にか『ママがキライなんて嘘だもん』って、ちゃんと言えた。
『ごめんなさい』って仲直りもしたんだよ?」
頭の痛みが強くなる。
紗優の話、ちゃんと聞きたいのに。
痛みに支配されそう。