契約恋愛~思い出に溺れて~


「だけど、ママ朝起きたら怒ってるみたいだったから、おとうさん言っちゃったのかと思って心配しちゃった」


紗優の大きな瞳から、ポロリと滴が落ちる。


「あの、あのね。ママ。キライなんてウソ。
ママが好きだよ。ホントは好きなの」

「紗優」

「ごめんなさい」


何度も小さく言いながら、紗優は肩を震わせる。

紗優が泣くことなんてないのに。

ごめんなさい、は私の言わなきゃいけない言葉だ。

紗優の為なんて言いながら、忙しさにかまけてちゃんと見てもあげずに。


英治くんは、どうしてそのままを私に教えてくれなかったの?


私が傷つくと思って?

だから、あんな風に言ったの

自分の為に、仕事を調整しろって?


あの言葉は本当は誰の為?


紗優

英治くん


それとも、私の為?

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