契約恋愛~思い出に溺れて~

だけど決意とは裏腹に、体は思うようにならなかった。

痛みが酷くて、吐き気までしてくる。


すると突然、思い立ったように紗優が立ち上がり、私の肩を励ますように叩いた。


「ママ、待ってて。おとうさん、呼んでくるから」

「さ、ゆ」

「ここにいてね!」


泣いてたと思った紗優が、力強い足取りで来た道を走って戻っていく。

小さくなる背中に、本当に自分の傍から遠ざかって行ってしまうような錯覚を起こして、涙があふれてくる。


嫌だ。
行かないで、紗優。

キライなんかじゃないよ。

紗優の事が、一番大切だよ。


ごめんね。

自分のことでいつも手一杯になってしまって。

紗優を不安にさせるお母さんでごめんね?


でも大事なんだよ。

紗優は私の、宝物なんだよ。

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