契約恋愛~思い出に溺れて~
「……かないで。さ、ゆ」
頭の痛みが、地響きのように体中に響く。
涙が止まらない。
お願い。
居なくならないで、紗優。
もう誰も失うのは嫌だよ。
膝だけでなくお尻まで地面について、ただ痛みを堪えるようにうずくまっていると、頭の上から声がした。
「大丈夫か?」
肩を掴まれて、思考の闇から不意に抜けだす。
見ると、息を切らした英治くんがそこにいた。
「英治、くん」
「そんなに痛い? 顔ボロボロだぞ」
「紗優、は」
「部屋に置いてきた。俺一人の方が速いから」
「……うえっ」
不安で胸が痛い。
顔を押さえながら、立ち上がろうとするけれど、体に力が入らなかった。