契約恋愛~思い出に溺れて~
彼の背中から伝わる温度で緩んだ気持ちに、痛みが打ち付けて、反射的に声が出た。
「痛い」
「うん。もう少しだからな」
「気持ち悪い」
「頑張れ、紗彩」
弱音なんか、吐くのは嫌いなんだけど。
それに一つ一つ答えてくれる彼が傍にいると、甘えるのも悪くないって気がしてくるから不思議。
「英治くん」
「ん?」
「私、紗優に嫌われたくない」
「……嫌ってなんかないよ。何か聞いたのか?」
「紗優を泣かせたくない」
「分かってるよ」
涙と一緒にあふれ出る、自分の気持ちが止められない。