契約恋愛~思い出に溺れて~
寂しさを紛らわせてくれた感謝をこめて、彼に向かって笑顔をつくる。
さよならを言って終わる、一夜だけの関係。
そういうことにしましょうと、言いだすつもりで。
それを覆したのは、達雄さんの言葉だった。
「俺とつき合わない?」
「え?」
「旦那は死んだんだろ?
だったら別に不倫関係になる訳じゃない」
「でも、あなたの好きな人は別にいるんでしょう?
生きてるんなら頑張ってみれば?
絶対に無理なんてことないと思うけど」
私はそう言いながら、彼の向かいに立った。
出会ったばかりなのに、すごく近いところにいるような気がするのは、どうしてなんだろう。
「好きな子は妹なんだ。だから好きになったらいけない。忘れたいんだ」
「え?」
「すぐに君だけを好きにはなれない。でもそれはお互い様だろ?
君は俺に近いような気がする。だから、多分一緒にいれる」
「それは」
それは確かに、自分でも感じていたことだ。
彼は私に近い。
多分とても。