契約恋愛~思い出に溺れて~

長い話だったから、紗優は飲み込めてないかもしれない。

もっと分かりやすく伝えられたらいいのに、それが出来ない自分がもどかしい。


新しい言葉を探しながら紗優を見ると、まっすぐな視線が返ってきた。

ユウに似た、太めの眉がハの字になってて、困らせてしまったかと心配になる。

じっと見ていると、紗優はおずおずと話しだした。


「ママ、サユねぇ。『ごめんね』っていわれるのキライ。

だって何だか悲しくなるんだもん。

サユね。
ママが好きだよ。

だから、『ありがとう』がいい。
『偉いね』って笑ってもらえると嬉しい」

「サユ」

「サユにも、イヤなことあるよ。
ママがいなくてさびしいって思うこと、いっぱいある。

だけどママが、帰ってきてお話聞いてくれた日は、
『サユは頑張ってるね』ってそう言ってくれる日は、いつも嬉しくなって眠れるの。

だから、ママと一緒にいたい。

でも、今日みたいに泣いてるママより、笑ってるママがいい。
笑ってるママと、一緒にいたいよ」

「紗優」

「サユ」

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