契約恋愛~思い出に溺れて~
それから
その後はトントン拍子に事が進んだ。
仕事の件は部長に相談し、人事異動の際に降格という形で調整がまとまった。
「いいのか?」
私がずっと仕事に熱心だったことを知っている部長は、試すようにそう言う。
その視線をきちんと受け止めて、背すじを伸ばして答える。
「いいんです。家族が一番大事ですから」
「もったいないなー、横山」
「子供に将来グレられた方が勿体ないですよ」
「ははは。母親意見だな」
今は育児に参加する人が多いとはいえ、まだまだ日本は男性社会だ。
全員に自分の気持ちを分かってもらえるとは思っていないから、それで良かった。