契約恋愛~思い出に溺れて~


 それからも、日々は慌ただしく過ぎる。

渚が年末で退職し、新年はその人手不足を補うべく、必死に働いた。
残業時間は増え、紗優の寝顔ばかりを見る日が続く。

せめてもと、早起きをして朝食だけは紗優の好きなものを作る。

「おいしいねぇ」

って笑ってくれるだけで、元気が出てくるから不思議なものだ。


達雄さんとは、月に1度か2度、
どちらかがやりきれないほど疲れてしまった時に会った。

契約の恋人だから、そんなに頻繁に話すことはないけれど、
メールは週に何度かやり取りして近況を話しあったりしていた。


会うときは、大抵私の方が仕事が遅いので、
あの時のブルースバーで待ち合わせる。

【Hellebores】に入ると、カウンターで先に手を挙げるのは何故か英治さん。

待っている間、達雄に付き合ってくれてるようだった。
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