契約恋愛~思い出に溺れて~
「ねぇ」
「うん?」
「契約恋愛って、本当はすごく不謹慎なことだけど。
私にとっては、多分必要だったんだわ。
ユウを思い出に変えていくために。
あなたを一人の男の人として見るために。
ぬるい馴れ合いのような期間だったけど、それが無かったらきっと今でも、私は過去にこだわっていたと思う」
「……そうだな」
自分の弱さや汚さを受け入れることで、歩み出せる一歩もある。
遠回りに見えるかもしれないけど、そこには大切なものが確かにあるんだ。
英治くんが、ビールを飲みこむ。
ごくりという音と共に動く喉仏にドキリとする。
私は彼に恋をしている。
それがすごく分かる。
「まあ正直、ちょっとはヤキモチを焼かない訳でもないんだけどね」
「そうなの?」
「当たり前だろ?」