契約恋愛~思い出に溺れて~


再びピアノが鳴り始める。

その上に置かれた綺麗な白い花鉢。

俯いて咲くその儚げな姿をみて、ふと思い出す。


「そう言えば、英治くんこのお店の名前の意味知ってる?」

「ヘレボルス? ああ前にオーナーに聞いた事あるよ。花の名前なんだよね」

「そう。ホラあのピアノの上にのってるお花」

「そうだ。クリスマスローズだな。確か、英名なんだよね。全然違う名前なんだなって驚いたことがあるよ」

「英名であってるんだ」


ユウの記憶も確かだったという事か。
ようやくはっきりした結論を得て、お腹のあたりに落ち着いた感じがする。


「正式には、ヘレボレス・ニゲルという品種をクリスマスローズと呼ぶそうですよ。
種類が豊富で、花言葉も色々あるんです」


私たちの話に反応したオーナーがそう教えてくれる。


「へえ、じゃあ例えば?」

「そうですね。『追憶』とか」

「追憶……」

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