契約恋愛~思い出に溺れて~


「何?」

「ううん。煙草の匂いだなって。
うち、父もあまり吸わないから、あんまりこの匂いに免疫が無いの」

「達雄も吸わないもんな。死んだ旦那さんは? 吸わない人だったの?」

「ええ。運動する人だったから、煙草吸うと息切れやすくなるとか言ってたわ」

「へえ。スポーツマンなんだ」


サーファーをスポーツマンと言っていいのかよくわからないけど。


「あれ、紗彩。来たのか」


そのうちに達雄が戻ってくる。

足取りが少しフラフラしている。
今日は何だかもう酔っているようだ。


「飲み過ぎ?」

「まあね」

「やけ酒してたんだよ」

「英治、うるさいぞ」

「はは。悪い悪い」


拗ねたようにそっぽを向く達雄を、英治くんが宥める。
< 56 / 544 >

この作品をシェア

pagetop