契約恋愛~思い出に溺れて~
「何?」
「ううん。煙草の匂いだなって。
うち、父もあまり吸わないから、あんまりこの匂いに免疫が無いの」
「達雄も吸わないもんな。死んだ旦那さんは? 吸わない人だったの?」
「ええ。運動する人だったから、煙草吸うと息切れやすくなるとか言ってたわ」
「へえ。スポーツマンなんだ」
サーファーをスポーツマンと言っていいのかよくわからないけど。
「あれ、紗彩。来たのか」
そのうちに達雄が戻ってくる。
足取りが少しフラフラしている。
今日は何だかもう酔っているようだ。
「飲み過ぎ?」
「まあね」
「やけ酒してたんだよ」
「英治、うるさいぞ」
「はは。悪い悪い」
拗ねたようにそっぽを向く達雄を、英治くんが宥める。