契約恋愛~思い出に溺れて~
「こんな話されても平気?」
確かめるように英治くんが私を見る。
「割り切って付き合ってるんだもの。平気よ?」
「そう」
私の返事に、彼はビールを口に含みながら答えた。
彼は彼なりに、私たちの関係について理解してくれているのだろう。
実際、達雄の恋心に対してヤキモチを焼くような事は全くなかった。
体を重ねていれば、多少情が移るものだろうと思っていたから、それは自分でも意外な気がしたけれど。
どちらかと言えば、達雄には『同士』という気持ちしかない。
一番大切な人を手に入れられないから、逃げ場を求め慰め合う『同士』。
達雄なら絶対に私に気持ちを移したりしないという、変な自信が私にはあって。
その不可思議な安心感から、本心を吐き出すことが出来る。
お互い様だから、
利用していることも利用されてることも責められない。
だから居心地が良い。
まだ始まってそれほど長くない関係だけれど、
こうして時々息を抜くことが、私が日々の生活で自分を保つための原動力になってもいた。