契約恋愛~思い出に溺れて~
「じゃあ、俺はそろそろ帰る」
いつものように、英治くんが先に席を立つ。
私は席を詰めて、達雄の隣に座った。
もう真っ赤な顔をしてちびちびとグラスに口をつけている彼は、不意に私の手を握った。
「今日は大丈夫か?」
「うん。でももうちょっと待って。酔わせてよ」
「分かった」
相当、落ち込んでいるようだ。
でも妹に対して、そんなに惚れこんでしまえるものなのかしら。
それから数杯、カクテルを飲んで、
程よく酔ったあたりで店を出た。
その日の達雄は、荒々しくて。
ユウを思い続けるのが難しかった。
彼は私をそんなに荒く抱く事はあまりなかったから、
違和感に体が微妙に反応する。