契約恋愛~思い出に溺れて~
「サユ、お腹すいたよう」
「そうね。朝ご飯食べようか」
階段を降りながら、玄関で外出の準備をしている父が見える。
「おじいちゃん、行ってらっしゃい」
「ああ。紗優も気をつけろよ」
「はあい」
ちらりと見られて、すぐ言葉が出せない。
本当は週末、車を出してほしいとお願いしないといけない。
増えてきた紗優の絵本を収納する棚を買いに行きたいのだ。
「あの、お父さん」
「じゃあ行ってくる」
私の呼びかけは聞こえているのか居ないのか、ばたりと扉を閉められる。