契約恋愛~思い出に溺れて~
サユは、父親が居ない事を寂しがっている。
言葉には出さないけど、たまにお父さんの絵を書きましょう、なんて事が保育園であったりすると、こっそり泣いていることがあるらしい。
遅く帰ってきた私に、母がそれを教えてくれ、更にこう言う。
「再婚とか考えたらどうなんだい」
再婚をするつもりはない。
私の夫も、紗優の父親もユウだけだ。
大人は割り切った付き合いが出来ても、子供はそうはいかない。
優しくしてくれるおじさんが現れたら、紗優は彼に父親を望み始めるだろう。
それが怖いから、達雄を紗優に会わせるのは控えていた。