契約恋愛~思い出に溺れて~
数日後の午後。
出先から直帰できるタイミングで、達雄に電話をかける。
いつも定時に終わる彼は、私の指定する店までやってきた。
デパートで家具を買うのも贅沢な感じがするけど、木彫が可愛くて目をつけていたものがあるのだ。
入り口で待ち合わせをして、5階を目指す。
達雄は仕事で疲れているのか、目の下にクマが出来ているのが見えた。
「お疲れね」
「まあな。最近あんまり眠れなくて」
「忙しいの?」
「そう言う訳でもない」
そう言いながら並んで歩くと、後ろから声をかけられた。
「達雄さん?」
「……司くん?」
振り返ると、20代くらいの男女がそこに居た。