契約恋愛~思い出に溺れて~
一人は肩幅のある逞しそうな男の人だ。
全体にこざっぱりという印象があるけど、目力があり意思は強そう。
そしてもう一人は、肩まで伸びた髪をそのまま下ろした、大人しそうな女の子。
彼の少し後ろに下がり、戸惑いを浮かべて私を見ている。
「綾乃、デートか」
「お、お兄ちゃんこそ」
「え?」
この子が、綾乃ちゃん?
「こんにちは」
私は達雄の脇で頭を下げる。
その間も、彼女の視線がまとわりつく。
「こ、こんにちは。いつも兄が、お世話になっています」
「いえ、こちらこそ」
「達雄さんにもこんな素敵な人が居たんですね」
にっこりほほ笑むのは、綾乃ちゃんの彼氏なのかしら。