契約恋愛~思い出に溺れて~
「あの子が、綾乃ちゃん?」
「ああ。そしてその彼氏の司くん。
大手商社の営業なんだ。申し分ない感じだろ。
しっかりしてる。
俺は仕事で彼と絡んだ事があるけど、若いのに大したもんだと思ってた」
「そうね。堂々とした印象があるわね」
「彼なら間違いないさ」
言ってる言葉の割に、達雄の背中は落ち込んでる。
それに、さっきの綾乃ちゃんの視線が、何だかすごく気になるのだけど。
「綾乃ちゃん、あんまり嬉しそうじゃなかったけど」
「俺に出会ったからだろ。こんなところで兄貴に会えば恥ずかしいだろ」
「そうかしら」
なんかもっと、敵意さえ感じるような。
そんな視線だったんだけどな。