契約恋愛~思い出に溺れて~


「それにあなたはやたらに兄貴ぶるのね」

「まあな。保護者だから、弱いところは見せられない。紗彩なら分かるだろ」


そう言われて、紗優の事を思い出す。
確かに、あの子の前で弱い姿をさらすわけにはいかない。


「そうね。分かるわ」

「だろ。もうこの話やめようぜ」

「うん」


綾乃ちゃんの視線がとても気になったけど、それ以上詮索するのもおかしな気がして、考えるのをやめた。

気を取り直してエスカレーターを上り、本棚を買う。
前に通りすがりに見つけて、高価だからと迷っていたけど、どうしても諦められなかったものだ。


「重いでしょ。ごめんね?」

「いいよ。でもこれ組み立て式だけど、紗彩は作れるのか?」

「ええ。こう見えても男っぽい事は得意よ」

「そんな感じ」


力こぶを作って見せると、クスリと笑われる。

ユウが居なくなってから、何でもできるようになった。
昔は何でも頼ってばかりだったのに、必要に迫られればいくらでも逞しくなれるものだ。

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