契約恋愛~思い出に溺れて~
「お帰り、紗彩」
2階から母が降りてくる。紗優を寝かしつけていてくれたのだろう。
「ただいま。遅くなってごめんなさい」
「いいけど。さっきの車……」
もしかして見られた?
ドキドキしながら、母の次の言葉を待つ。
「付き合ってる人がいるなら言いなさいよ?」
予想通りの反応に、口に唾が溜まった。
ゆっくり飲みこんで平気な顔を作る。
「そういうのじゃないの」
「いいんだよ、隠さなくたって。いつか連れてらっしゃい」
「ホントに、違うんだってば」
「紗優だってお父さん欲しいだろうに」
「お母さん……」
それを言われれば胸が痛い。
自分は、割り切って慰めてもらっているくせに。
紗優にはユウを忘れないでほしいと願っている。