契約恋愛~思い出に溺れて~
「それは分かってるけど。とにかくそういう相手じゃないの。紗彩の事は大丈夫。私一人でも紗優の生活費くらい稼げる」
「それは父親の役割でしょって言ってるのよ。もういいわ。頑固なんだから」
ブツブツ言いながら母はキッチンに戻っていく。
私は、その後をついて行く気にもなれず、2階へと向かった。
静かに扉を開けると、紗優の寝息が聞こえる。
こうして寝顔を見ているとユウに似ている。
眉毛の辺りがそっくりだ。
「紗優、ただいま」
軽く頭を撫で、仏壇へ向かう。
「ユウ、ただいま」
写真のユウは変わりないのに、何だか責められてるような気分になる。
「ごめんね」
契約恋愛なんてものに頼ってしまって。
「でも、私の夫はあなただけだからね」
必死にそう言ったって、返事なんてある訳が無い。
だけど言い訳せずに居られなかった。