契約恋愛~思い出に溺れて~
「あの事故が、本当に夢だったら良かったのに」
そうしたら今でも、隣に彼がいたはずだった。
あれから2年が経つ。
あんなに愛していた彼の姿を、私はきちんと思いだせない。
記憶にはちゃんとあるはずなのに、
写真のような鮮明さを保てない。
「……っ、えっ」
悔しかった。
彼の面影を忘れていく自分が。
どうしようもなく情けなかった。
声を出しては紗優を起こしてしまうから。
私は出来る限り声を殺して泣いた。