うそつきでごめん





目を覚ました私を見ると目の前に佇みながらこちらを見下げる彼は「残念」とだけ呟いたがその表情は柔らかくて、どう見ても残念そうじゃない。

それが少し癪に障る。


本気で残念がられても困るのに矛盾してる。私は少しおかしいのだ。多分、寝起きだからかな。




「そんな不機嫌そうな顔しなくてもいいのに」



どうやら顔に出ていたようで彼は宥めるようにわしゃわしゃと髪を乱暴に撫でた。

骨ばった堅い手は男らしいけれど好きじゃない。




あの人の手は柔らかくて、触れられるだけで心臓がうるさかったのに。


目の前の彼に触れられても微塵もどきっともしないんだから私という生き物は本当に正直だと思う。






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