僕は生徒に恋をした
「すみません、お待たせしました」

俺の声に視線を移した山田は少し不機嫌そうに見えた。

まるで、いいところを邪魔されたとでも言われたようで、俺はしっかり傷付いた。

山田が手嶋先生を好きなのはもう分かっている。

彼女が生徒じゃなくなるまで、長期戦でいこうと決めたのも自分だ。

手嶋先生が山田に興味ないことも確かなのに、どうしてこんなに気持ちばかりあせってしまうのだろう。

「行こうか」

俺の顔を見て手嶋先生は歩き出す。

「まだいいじゃん」

山田は引き止める。
俺ではなく手嶋先生を。

「わがままだな」

手嶋先生が苦笑すると山田は赤くなった。

これが、山田が恋をしているときの顔か。

そんな彼女を見ているのが辛くなり、俺は手嶋先生の後に続いた。
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