僕は生徒に恋をした
本当はもっと山田と話をしたかった。
浴衣が似合っていると言えば良かった。

だいぶ歩いた後、俺は手嶋先生の背中に向かって声をかける。

「正直、先生がうらやましいです」

「やけに素直だな」

「諦めるのはやめました」

俺の言葉に、手嶋先生はそうか、とだけつぶやき、もうその話題には触れなかった。

その後、形だけの見回りを続け、しばらくするともうすぐ22時になろうとしていた。

「そろそろ終わりですね」

「あまり混まないうちに、早めに退散するか」

祭りの最後の花火が終わると、人の流れが多くなり、通りを歩くのが困難になる。

俺が彼の言葉に頷いたとき、目の前を通った女性が落とし物をした。
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