僕は生徒に恋をした
てっきり山田はあのとき、俺に気付いてないと思っていた。

だから、手嶋先生に声をかけたとき、急に現れた俺に話を遮られて不機嫌そうにしたのだと思っていた。

「やっぱり心がこもってないか」

俺が言うと、山田は首を振ってもう一度笑った。

「大丈夫、私は嬉しかったよ」

俺は彼女に見とれてしまった。

そして何でだろう、と思う。
どうして山田をこんなにも愛おしく思うんだろう。

「じゃあ」

これ以上一緒にいると息が詰まってしまいそうだった。
俺は彼女に別れを告げて背を向ける。

山田は俺を見送ろうと、思わず鼻緒が切れた方の足を出してしまい、転びそうになった。

「危な…」

俺はギリギリの所で山田を支えることができた。
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