僕は生徒に恋をした
しかし、まるで抱き抱えるような形になってしまい、内心すごく慌てる。

彼女の体温と香りに、目眩がするようだった。

「本当にお前は、危なっかしいな」

動揺を隠すために、ついからかうような口調になってしまうと、山田は俺の顔を見上げて言った。

「わざとだって言ったらどうする?」

彼女の顔は真剣に見えた。

「え…」

俺は言葉を失う。

わざと?何のために?

今日の山田の言葉は、いちいち俺を困惑させる。

頭がこんがらがってくる。

「…なんてね」

そう言って笑った山田はいつもの穏やかな顔だった。

俺は確実に彼女に振り回されている。

「大人をからかうな」

「バイバイ、先生」

手を振って家の中に入った山田を見て、俺はようやくホッと一息つけた。
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