僕は生徒に恋をした
俺にできることは、今の話に触れないことだけだ。

山田は俺の手からジュースを受け取ると、小さな声でつぶやく。

「先生、どうしよう」

俺に聞かないで欲しい。
お前を好きな俺に、何を言えって言うんだ。

本当なら今すぐにでも、俺も好きだと伝えたい。だけど。

「…武内はいいやつだよ」

俺は教師で、山田は生徒で。

俺から言えることは限られていた。

昨日、佐藤先生に林原を勧めたのと同じセリフを口にしながらも、内心は真逆だ。

うまくいかないで欲しいと願っている。

「…部活の練習も熱心だし、人望もある」

俺の知る限り、非の打ち所がない、いいやつだ。
< 133 / 374 >

この作品をシェア

pagetop