僕は生徒に恋をした
俺は廊下でバランスを崩し、佐藤先生に支えてもらう形になった。
ほんのわずかだが、いい香りがする。香水だろうか。

「大丈夫ですか」

佐藤先生が心配そうに俺の顔を覗き込む。

頭がボーッとしているせいか、俺は無遠慮に彼女の顔を見つめ、何で佐藤先生が俺の家にいるのだろう、なんてとんちんかんなことを考えていた。

「あの、お水持って来ますね」

彼女がキッチンに行ってから少し間が開いた。

俺はやりやすいように自分流に食器を片付ける癖があるから、もしかしたら佐藤先生にはグラスが見つけられないのかもしれない。

そう思い、キッチンに向かうと案の定、彼女はグラスを探しているようだった。

「グラスはここ」

俺は無意識に、立っていた佐藤先生の肩に片手を置き、もう一方の手で高い位置にある開きに手をかけた。
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