僕は生徒に恋をした
「何かあったんですか?」

「佐藤先生こそ」

そう言えば、家に来た用件さえ聞いていなかったことを思い出した。

今までに何人かの先生と一緒に訪ねてきたことはあったが、佐藤先生が一人で来たことはない。

しかもこんな深夜に、一人暮らしの男の家に訪ねて来るのはおかしいということに、今さら気付いた。

「昨日林原先生に、気持ちには応えられないと伝えました」

俺は朦朧とする意識の中で、佐藤先生の言葉を頷きながら聞いた。

目がかすんで彼女の顔がよく見えない。

一体どんな表情をしているだろうか。

「佐々本先生のことが好きです」

彼女の告白は聞こえたが、頭には入って来ない。

何の反応もできない俺に痺れを切らしたのか、彼女は俺の座っているすぐ側に膝をつくと、そっと俺の肩に手を伸ばす。
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