僕は生徒に恋をした
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部活の後、俺は校門で佐藤先生を待っていた。

あんなに辛かった二日酔いも、もうすっかり良くなっていた。

しかし、胃が苦しい。
俺は佐藤先生に会って、一体何を言えばいいのだろう。

「佐々ちゃん、バイバーイ」

「気を付けて帰れよ」

生徒に声をかけられるままに、俺は笑顔で応える。

作り笑いをしてしまう自分自身に、何で楽しくもないのに笑うことができるのだろう、と疑問さえ浮かんだ。

塀に寄り掛かりながらそんなことを考えていると、ハイヒールの足音が、俺の前で止まった。
佐藤先生だった。

俺が寄り掛かっていた体を起こし会釈すると、彼女も俺に倣って頭を下げる。

するとまた、あの香りがした。
俺はその香りから気を逸らしたくて、急いで口を開いた。

「この後、時間ありますか」

佐藤先生が頷いてくれて、ホッとした。
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