僕は生徒に恋をした
黙り込んだ俺に耐え切れなかったのか、佐藤先生はいいえ、とつぶやく。

「謝るのは私です。
私が、先生が酔っているのを利用したんです」

「でも、それは林原が言ったから―――」

「私が卑怯だったんです…。
先生が責任を感じる必要なんて本当はないんです」

彼女はそう言ってくれたとしても、俺は自分が許せなかった。

山田への気持ちがあるにも関わらず、酔っていたとはいえ、他の女性と一夜を過ごしたなんて不誠実すぎる。

「―――あれ、うちの生徒ですね…」

佐藤先生が不意に窓の外を見てつぶやく。

彼女の視線の先を見ると、道の向こうに山田と武内の姿が見えた。

「ええ…」

彼らは俺たちに気付いた様子はなく、通り過ぎて行く。
< 156 / 374 >

この作品をシェア

pagetop