僕は生徒に恋をした
どうやらそれは白い板のようで、目を凝らすと、誰かがその板を運んでいるのだと分かった。

小柄な人なのだろう、姿は完全に板に隠れてしまい、俺の位置からだと、白い板がひとりでに歩いているように見える。

校舎から少し離れた大きな木の側で白い板はやっと立ち止まり、その後ろから山田が姿を現した。

「山田…?」

山田は板を木に立てかけるとその場を立ち去ってしまった。

気になって様子を伺っていると、しばらくして山田が戻ってきた。

手にはたくさんの缶が抱えられている。

一体何が始まるのだろう。

こんなところから俺に見られているとは気付かず、山田は缶を一つ一つ開けていく。

缶の中には色とりどりの絵の具が入っていた。

山田は持っていた鞄から取り出した筆を絵の具に浸すと、おもむろにそれを白い板に走らせた。
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