僕は生徒に恋をした
もうすぐ山田は受験を迎える。
将来を決める大事な時期だ。

俺の存在が高校生の彼女にとって、プラスになるはずがないのは明らかだった。

俺は気持ちを落ち着かせるために小さく息を吐く。

「気持ちは嬉しいけど、応えることはできない」

俺は上手く喋れているだろうか。

これまでに何度か口にした言葉だったけど、今回ほど胸が痛んだことはなかった。

山田の顔が強張ったのを見て、俺は彼女を傷つけたことを悟る。

だけど辛いのは俺も同じだった。

本当なら両手を上げて喜びたいくらいに嬉しいのに、そうできない辛さはきっと誰にも分からない。

「私にはやっぱり、1ミリも可能性ないか…」

山田はぽつりとつぶやく。

可能性がないどころか、俺の気持ちは全てお前のものなのに。
バカらしくて笑えてくる。
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